研究内容

(1) DNA-タンパク質クロスリンク損傷の修復と生物影響

環境中の化学物質、抗がん剤、放射線は、DNAとタンパク質が共有結合により不可逆的に結合したDNA-タンパク質クロスリンク(DPC)損傷を誘発することが古くから知られていた。さらに、多くの抗がん剤もゲノムにDPC損傷を誘発すことが明らかとなっている。しかし、DPCを特異的に含むDNA基質調製の困難さから、修復機構や生物影響は明らかにされていなかった。私たちは、グアニン損傷の一つであるオキザニンがタンパク質と速やかに反応し、DPCを生じることを見出した。この反応を利用したDPC基質調製法を確立し、DPCの修復機構と生物影響を検討している。これまでに、原核生物では、DPC修復に相同組換えとヌクレオチド除去修復が関与すること、一方、哺乳類細胞ではDPC修復にヌクレオチド除去修復機構は関与せず、相同組替えにより損傷を回避していることを明らかにした。また、修復されなかったDPCは転写や複製に影響を及ぼすこと明らかにした。現在、これらについてクロマチン構造の影響を含め詳細な検討を行っている。

関連業績:Xie M., Shoulkamy M.I., Salem A.M., Oba S., Goda M., Nakano T., and Ide H., Aldehydes with high and low toxicities inactivate cells by damaging distinct cellular targets. Mutat. Res., 796, 41-51 (2016)

(2) 放射線が誘発するゲノム損傷

電離放射線は、付与するエネルギーの小ささと比較し甚大な生物影響を与えることから、放射線が誘発する生物効果の分子機構は古くから研究者の興味を引いてきた。特異な生物効果の原因は、クラスターDNA損傷であり、放射線がビームとしてDNAあるいはその近傍を通過する際に局所的に多重なDNA損傷を生じるためだと考えられている。しかし、その検討はシミュレーションを中心とする理論研究に止まってきた。しかし、最近の研究の進展によりクラスターDNA損傷の実験的検証が可能となった。私たちは、放射線医学総合研究所との共同研究により、重粒子放射線によって生じるクラスターDNA損傷の生成収率とその生体内プロセッシングについて検討を行っている。また、放射線が誘発するDNA-タンパク質クロスリンク(DPC)損傷についても同様な検討を行っている。

関連業績:Nakano T., Mitsusada Y., Salem A.M., Shoulkamy M.I., Sugimoto T., Hirayama R., Uzawa A., Furusawa Y., and Ide H., Induction of DNA-protein crosslinks by ionizind radiation and ther elimination from the genome, Mutat. Res., 771, 45-50 (2015)

(3) 高等真核生物における酸化および脱アミノ化塩基損傷の修復

細胞の呼吸によって生じる活性酸素との反応や水との接触によりDNA塩基には酸化損傷や脱アミノ化損傷が生じることが知られており、このタイプの損傷は、ヒトゲノム1日当たり10,000以上生成すると見積もられている。さらに、環境中の紫外線、放射線、発がん物質は、DNAと反応しゲノムの塩基損傷レベルをさらに上昇させる。DNAは、相補的な塩基対形成により遺伝情報を伝える。したがって、塩基に生じた構造変化はその水素結能を変化あるいは破壊し、複製や転写においてコピーエラーを誘発する。原核生物では、ゲノムに生じた塩基損傷は主に塩基除去修復機構により修復されることが既に明らかにされているが、近年の研究により、哺乳類など高等真核生物でもこの機構が基本的に保存されていることが明らかとなった。私たちは、哺乳類の塩基除去修復に焦点を当て、酸化塩基損傷(5-ホルミルウラシル、チミングリコール)、脱アミノ化塩基損傷(キサンチン、オキザニン)を認識するDNAグリコシラーゼの同定と機能解析を進めている。

関連業績:Zhang Y., Matsuzaka T., Yano H., Furuta Y., Nakano T., Ishikawa K., Fukuyo M., Takahashi N., Suzuki Y., Sugano S., Ide H., and Kobayashi I., Restriction glycosylases: involvement of endonuclease activities in the restriction process. Nucleic Acids Res., 45:1392-1403 (2017)

最近の総説

Ide H., Nakano T., Shoulkamy M.I., and Salem A.M., Formation, repair, and biological effects of DNA–protein cross-link damage. In Advances in DNA Repair (C. Chen ed.), InTech Open Publisher, pp. 43-80 (2015)

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